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双眼鏡の光軸(視軸)調整
鏡面反射
平面鏡に入射する光線の向き(波数ベクトルor方向ベクトルなど)をk、
鏡の法線ベクトルをiとすると反射光線の向きkRは次のように
与えられる:
直交する鏡での反射
光線が互いに直交する2枚の鏡で1回ずつ反射する様子を考える:
k⇒kS⇒kR。鏡の交線の方向ベクトルを
iとするとこれらの関係は以下のようになる:

直角プリズムの場合も同じ。
ポロプリズム1型
二つの直角プリズムをその稜線の向きi1とi2
が互いに直交するように配置したものである。そのとき入射方向とkと
出射方向kRの関係は次のようになる:

すなわちi1とi2が張る平面に
垂直な方向が「光軸」方向となる。従って光軸調整をする方法としてポロプリズムのセット全体を
動かすのではなく個々のプリズムを傾けてもよい。具体的には回転軸の向きがペアの相手のプリズムの稜線
方向と一致するように回転する(ただし回転中心はどこでもよい):
像の倒れ
以下に見るように2つのプリズムが直交していない(i1とi2
が互いに直交していない)場合倒立像(通常の双眼鏡のようにケプラー望遠鏡と組み合わせた場合正立像)からの
回転が生じるが、これは像の倒れと呼ばれている。

「直交する鏡での反射」の項で見たように直角プリズムの内部での2回反射は鏡映+空間反転に形式上等しい。
従ってポロプリズムI型のように直角プリズム2つの場合は(鏡映と空間反転は可換なので)2回の鏡映と
同じになるが、2回の鏡映は回転に等しくその回転角は鏡映面が成す角の2倍に等しいので直交している場合は
ちょうど倒立像になり、ずれている場合はずれ角の2倍回転して(「倒れて」)見える。
光軸調整
像の倒れはない(または左右とも同じ方向に同じ角度倒れている)とする。
ステップ1
まず適当な眼幅の状態(例えば一番広い状態)で左右で遠方の物が同じ
方向に見えるように調整する(これは左右どちらか一方の光軸を調整することで可能である)。このとき
中心軸(眼幅調整するときの回転中心軸)上にある遠い物体(鉄塔先端)が左右の視野内で
見える向き(青い矢印・単位ベクトル)は同じ(平行)であるが中心軸の向きとは一般に
一致していない:

これを中心軸方向から見ると下図のようになる:
ステップ2
ここで眼幅を変える(例えば一番狭い状態にする)と目標物の見える向きは回転し左右で一致しなくなる。

左右の視野内で目標物が見える方向と
本来見えるべき方向である赤い点で示した中心軸の方向との関係は次の図のようになる
(平行器を通して見たときはこのように見える)ので赤い点の位置に目標物がくるように
光軸を調整すればよい。

実際には赤い点が見えているわけではないので1回でピッタリ合わせることは難しいが
1回の調整でズレを1/4程度に減らしていくことができれば眼幅を「広い」⇔「狭い」と
変えての調整を3回繰り返せば1/4^3=1/64だから例え最初30度のズレがあったとしても
一番厳しい上下方向の許容ズレの値(JIS1級で見掛け角度0.5度以内)以下に追い込むことが
できる。
上の図は眼幅を変えるときに右側を相対的に時計回り、左側を相対的に反時計回り
に回したが反対回りの場合ズレに対して目標物を移動する先は下図のように反対側になる。

なお調整に使う目標物は説明の都合上中心軸上にあるとしたが、左右のズレは視野内のどこでも
同じなので適当に選んで構わない。
以下もう少し具体的な道具立てとそれを使った調整手順を書く予定…
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[.. Apr. 2019]